声のお仕事
その昔、ナレーターやラジオDJになりたくて養成所に通い、事務所に所属していたことがありました。
ナレーターやラジオDJは声のお仕事です。
声のお仕事なら声優さんも目指せば? なんて言われたこともあったけど、今の声優さんはアニメの仕事だけじゃなくて歌も歌うし、なんならバッキバキに踊るし、容姿だってアイドル並みというか同じ人間なのかっていうくらい可愛くて美人な方ばかりなので、私はその助言を秒で断りました。
自分で言うのもアレだし、こんなこと言ったらグーパンされるかもしれませんが、自分の容姿にすごくコンプレックスがあるわけではありません。顔面がカリメロで低い鼻も短い手足も、それ含めて自分だなぁ~と思っているのでむしろすごく好きなんです。
だけど、もし何かの間違いで声優さんになれたとしても、今の声優さんは顔出しが基本…!
写真に撮られることと、目立つことが死ぬほど苦手な私にはあまりにも不向きなお仕事です。
その点、ナレーターやラジオDJなら顔出しをしなくてもすむ…!
当時の私は、勝手にそう考えていました。
事務所のレッスンとは別に個人的にもボイストレーニングに通って自分なりに一生懸命やっていました。
そこの先生には毎回のように「お前はタレントなんだからもっと芸能人オーラを出せ!」って怒られてて、帰り道毎回泣いてました。
(芸能人オーラってなんだよ~。そんなこと言われたって私は芸能人になんかなりたくないんだよ~。目立ちたくないよ~。)
自分のやりたいことと求められていることのギャップに悩み、苦しみました。
そんな時、事務所の人に「宣材写真を撮ってきなさい」と言われたのです。
宣材写真…?
しゃ、しゃしん…???
それがないとオーディションも受けられないし、仕事もできないと。
しかもヘアメイクさんにメイクをしてもらってカメラマンさんに撮影してもらうとのこと。
撮影当日、スタジオに向かう私といったら足が重くて重くて…。「私だけなんか似顔絵とかじゃダメかなぁ…」とひたすら考えていました。
七五三以来、ちゃんとヘアメイクをしてもらっていざ撮影。
他の事務所の先輩方はそれはもう可憐に撮影をこなしていきます。
そしていよいよ私の番です。
ガッチガチに緊張しちゃって、カラダが動かせません。
見かねたカメラマンさんが「キミ、カメラ嫌いでしょ」
ビンゴ!よく分かってんじゃん!!
それでもいろいろ人前に立たせていただくお仕事もやらせていただきました。
目立つのは嫌だから本番前はありえんしんどかったけど、出ちゃえばどうにかなるし。
スタイル抜群で美人ばかりがいる某大手ショーのオーディションに放り込まれた時は、これは一体何の間違いなんだろうと思いながら、とりあえず周りにいる美人を観察して楽しむことにしました。もちろん落ちました。
結局、3年やってみて事務所を辞めたのですが、今は友だちと気ままにPodcastで番組やってしゃべれてるし、インタビューとか人に電話する時にとりあえず相手の人に聞き直されることはない声量と滑舌ができてるっぽいから、まぁ過去の経験は活きてるのかなぁって思ってます。